現代物理学は速さが速い時や重力が 強い時に時間と空間が混ざり合うとい う相対論と、小さなものを記述する量 子論の2大柱からできている。まずは 量子論はあと回しにして弦の運動を考 えてみるのが古典弦理論である。自然 界はなぜか作用S というものが最小に なるようにできている3。(D + 1) 次 元時空を動く弦を考える。その軌跡は 面となり、弦理論での作用S はその面 の面積であると考えられる[1]。 S = − 1 2πα′ ∫ dσdτ √ − ( ∂X ∂σ )2 ( ∂X ∂τ )2 + ( ∂X ∂σ · ∂X ∂τ )2 このS にいくつかの条件4を加えた上 で、最小になる条件を考えると Xμ = xμ 0 + 2α ′ aμ 0 τ + i √ 2α′ Σ n̸=0 (aμ ne −inτ − aμ n † einτ ) cos√(nσ) n となる。
提示された文章は、「古典弦理論(Classical String Theory)」の入り口について解説したものです。現代物理学の基礎から、弦(ストリング)がどのように空間を動き、それが数学的にどう記述されるかを説明しています。
要点を整理して、段階を追って解説します。
1. 物理学の2大柱と弦理論の立ち位置
まず、現代物理学の基盤である2つの理論について触れています。
- 相対性理論: 「速さが速い(光速に近い)時」や「重力が強い時」の理論。時間と空間が別々ではなく、「時空」として混ざり合うことを示しました。
- 量子論: 原子や素粒子など「小さなもの」を記述する理論。
この2つは非常に相性が悪く、統合するのが現代物理学の大きな課題です。弦理論は、粒子を「点」ではなく「ひも(弦)」として扱うことで、この2つを統一しようとする試みです。ここではまず「量子化」する前の、マクロな動きとしての古典弦理論から考えています。
2. 「作用」を最小にする原理
自然界には「最小作用の原理」という驚くべきルールがあります。 物体がある点からある点へ移動するとき、「作用 $S$」と呼ばれる物理量が最小(厳密には極値)になるような経路を自然は選択します。ボールを投げた時の放物線も、この $S$ を最小にする結果として現れます。
3. 世界面(ワールドシート)
点粒子が動くと「線(世界線)」になりますが、「弦」が動くと「面」になります。 これを世界面(ワールドシート)と呼びます。
文章中の「弦理論での作用 $S$ はその面の面積である」というのは、南部・後藤作用(Nambu-Goto action)と呼ばれる考え方です。石鹸膜が面積を最小にしようと張るように、弦も自分が描く面積を最小にしようと動く、と定義するのです。
4. 数式の解説:南部・後藤作用
提示された最初の式は、その面積を計算するための式です。
$$S = – \frac{1}{2\pi\alpha’} \int d\sigma d\tau \sqrt{- \left( \frac{\partial X}{\partial \sigma} \right)^2 \left( \frac{\partial X}{\partial \tau} \right)^2 + \left( \frac{\partial X}{\partial \sigma} \cdot \frac{\partial X}{\partial \tau} \right)^2}$$
- $\sigma, \tau$: 弦の場所($\sigma$)と時間($\tau$)を表すパラメータです。
- $X$: 弦が時空のどこにいるかを示す座標です。
- $\alpha’$: 弦の張力に関係する定数(レッジ・スロープ)です。
- ルートの中身: これは微分幾何学における「面積要素」を求めています。
5. 数式の解説:弦の振る舞い(一般解)
この作用 $S$ を最小にするという条件(運動方程式)を解くと、最後に出てきた複雑な式になります。
$$X^\mu = x^\mu_0 + 2\alpha’ a^\mu_0 \tau + i \sqrt{2\alpha’} \sum_{n \neq 0} \frac{(a^\mu_n e^{-in\tau} – a^{\mu\dagger}_n e^{in\tau})}{n} \cos(n\sigma)$$
この式は、弦の動きを以下の3つの要素に分解して表しています。
- $x^\mu_0$(初期位置): 弦が最初にどこにいたか。
- $2\alpha’ a^\mu_0 \tau$(重心運動): 弦全体がスーッと等速直線運動で移動する成分。
- $\sum (\dots)$(振動モード): 弦がブルブルと震える成分。
- $e^{-in\tau}$ などの項は、弦が波として振動していることを示しています。
- この振動の仕方の違いが、私たちの目には「電子」や「光子」といった異なる素粒子として見える、というのが弦理論の面白いところです。
まとめ
この文章は、「自然界は面積(作用)を最小にするように動くというルールに従って、弦が時空の中でどのように移動し、振動するか」を数式で導き出した過程を説明しています。
次は、この「古典的な弦」に量子力学のルールを当てはめる「量子化」の話へと続いていくのが一般的な流れです。
解析力学では、運動によって相空間上に作られる図形の面積が作用に相当すると習いました。この話との関連を教えて。
非常に鋭いご指摘です。解析力学で学ぶ「相空間(位相空間)の面積」と、弦理論で出てくる「世界面の面積」は、どちらも「作用(Action)」という言葉で結ばれていますが、実は「どの空間での面積か」という点が異なります。
この2つの概念がどう関連し、どう違うのかを整理して解説します。
1. 解析力学での面積(相空間の面積)
解析力学で「面積が作用に相当する」と言う場合、主に「モープルテュイの作用(略作用)」のことを指していることが多いです。
- 空間: 相空間(横軸が位置 $q$、縦軸が運動量 $p$ のグラフ)。
- 数式: $J = \oint p \, dq$
- 意味: 周期的な運動をする系において、相空間上で描かれる軌跡が囲む「面積」が、作用(の次元を持つ量)になります。
- ポイント: これは「運動の状態(位置と勢い)」の変化を面積として捉えたものです。
2. 弦理論での面積(実空間・時空の面積)
一方で、先ほどの弦理論の話に出てきた面積は、「世界面(ワールドシート)の面積」です。
- 空間: 私たちが住んでいる「時間+空間(時空)」。
- 数式: 南部・後藤作用(先ほどのルートの積分)。
- 意味: 弦(線)が時間の経過とともに動いたときに、時空の中に描き出す「膜」のような図形の面積。
- ポイント: これは「物体の存在そのものが占める広がり」を面積として捉えたものです。
3. 両者のつながり:なぜどちらも「面積」なのか?
なぜ異なる空間なのに、どちらも「作用=面積」という形で記述されるのでしょうか。そこには物理学の深い共通思想があります。
① 「最短・最小」を選ぼうとする性質
物理学には「自然界は何かを最小化しようとする」という根本的な原理(最小作用の原理)があります。
- 普通の粒子: 時空の中の「道のり(長さ)」を最小にしようとする。
- 弦(ひも): 時空の中の「面積」を最小にしようとする。
つまり、弦理論における「面積」は、粒子における「長さ」の自然な拡張になっています。
② 弦理論における相空間への変換
実は、弦理論の「世界面の面積」から出発して解析力学の手続き(ルジャンドル変換)を踏むと、ちゃんと弦の相空間を定義できます。
弦理論の作用を、弦の各点の位置 $X(\sigma)$ と、その運動量 $P(\sigma)$ で書き直すと、解析力学でおなじみの形式になります。
$$S = \int (P \dot{X} – \mathcal{H}) \, d\sigma d\tau$$
ここで $P \dot{X}$ の部分は、まさに解析力学の $p \, dq$ に相当します。つまり、「時空での面積(弦理論)」を最小化する問題は、数学的な手続きを通じれば「相空間での面積(解析力学)」を扱う問題へと翻訳できるのです。
まとめ
- 解析力学: 「位置と運動量(状態)」のグラフで囲まれる面積を考えている。
- 弦理論: 「時間と空間(存在)」の広がりそのものの面積を考えている。
ユーザー様が習われた解析力学の視点は、「物理量は幾何学的な量(面積や長さ)として解釈できる」という非常に重要な本質を突いています。弦理論は、その考え方を「点」から「ひも」へ、さらに高い次元へと応用したものだと言えます。
「状態の広がり」としての面積と、「存在の広がり」としての面積。この2つが作用という概念で繋がっているのは、物理学の非常に美しい側面の一つです。

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