生成演算子と消滅演算子

添付の画像について、なぜこれらの式で生成と消滅を表せるのか教えて。

簡単のためにℏ、ω、mなどは1にしていいよ。

ご提示いただいた画像にある生成演算子 (a^†) と 消滅演算子 (a^) は、量子力学(特に調和振動子)のエネルギー状態を「一段階上げたり下げたり」する魔法のようなツールです。

ご提案の通り、定数を簡略化して ℏ=1,ω=1,m=1 と置くと、式は驚くほどスッキリします。

a^=2​1​(q^​+ip^​),a^†=2​1​(q^​−ip^​)

なぜこれらが「生成・消滅」を意味するのか、その直感的な理由を3つのステップで解説します。


1. エネルギーの式を「因数分解」したかった

古典的な調和振動子のエネルギー(ハミルトニアン H)は、位置 q と運動量 p を使って次のように書けます。

H=21​(p2+q2)

数学の「二乗の和」の因数分解 x2+y2=(xiy)(x+iy) を思い出すと、この H も同じように分解したくなりますよね。

H≈2​1​(qip)×2​1​(q+ip)

この 「分解されたパーツ」そのものが a^† と a^ です。これらを掛け合わせることで、エネルギーそのものを操作できるようになります。

2. 「梯子(はしご)」を上り下りするイメージ

量子力学では、エネルギーの状態は飛び飛びの値(エネルギー準位)を持っています。これを梯子の段に例えると:

  • 消滅演算子 a^:エネルギーを「1単位」減らす(段を一つ降りる)
  • 生成演算子 a^†:エネルギーを「1単位」増やす(段を一つ昇る)

なぜそうなるかというと、ハミルトニアン H^ とこれらの演算子の間には、次のような不思議な関係(交換関係)があるからです。

H^a^†=a^†(H^+1)

これは、a^† を作用させると、エネルギーを +1 したのと同じ効果がある」 ということを数学的に示しています。

3. 「消滅」と呼ばれる決定的な理由

「生成」はエネルギーが増えるから分かりますが、なぜ「減らす」ではなく「消滅」と呼ぶのでしょうか。

それは、梯子の 一番下の段(基底状態 ∣0⟩) の存在に関係しています。 これ以上エネルギーを下げられない一番下の状態で消滅演算子を作用させると、状態そのものが消えてしまいます。

a^∣0⟩=0

「物理的な状態をゼロ(無)にしてしまう」 という性質から、「消滅」という強い言葉が使われています。逆に、何もないところからエネルギーの粒(フォノンや光子)を生み出すのが「生成」の役割です。


まとめると

  • 見た目: エネルギーの式を複素数の範囲で「因数分解」したもの。
  • 役割: エネルギー準位を一段階上げ下げするスイッチ。
  • 名前: 物理的なエネルギーの塊を「生み出す」か「消し去る」かという操作に基づいている。

この演算子を使うと、複雑な微分方程式を解かなくても、代数計算だけでエネルギーの状態がすべてわかってしまうのが一番のメリットです。

次は、実際にこれらの演算子を使って 「エネルギーの期待値」 や 「交換関係 [a,a†]」 を計算する手順を説明しましょうか?

この2つの演算子を合わせると数演算子として機能する理由を数式で教えて

生成演算子 a^† と消滅演算子 a^ を組み合わせた n^=a^†a^ が、なぜ「状態の個数(あるいは励起数)」を数える数演算子として機能するのか、数式で解き明かしましょう。

前回同様、簡略化のため ℏ=1,ω=1,m=1 とします。


1. a^†a^ を計算する

まず、定義式をそのまま掛け合わせてみます。

a^=2​1​(q^​+ip^​),a^†=2​1​(q^​−ip^​)

この積を計算すると:

a^†a^​=21​(q^​−ip^​)(q^​+ip^​)=21​(q^​2+iq^​p^​−ip^​q^​+p^​2)=21​(q^​2+p^​2+i(q^​p^​−p^​q^​))​

ここで、量子力学の最も重要なルールである交換関係 [q^​,p^​]=q^​p^​−p^​q^​=i (今は ℏ=1 なので i)を代入します。

a^†a^​=21​(q^​2+p^​2+i(i))=21​(q^​2+p^​2−1)=21​(q^​2+p^​2)−21​​

2. ハミルトニアン(エネルギー)との関係

調和振動子のエネルギーを表すハミルトニアン H^ は H^=21​(p^​2+q^​2) です。 上の式を見ると、まさにこの H^ が含まれていることがわかります。

a^†a^=H^−21​

あるいは

H^=a^†a^+21​

3. なぜ「数を数える」ことになるのか?

量子調和振動子のエネルギー準位 En​ が以下のようになることはご存知かもしれません。

En​=(n+21​)(n=0,1,2,…)

ある状態 ∣n⟩ にハミルトニアンを作用させると、そのエネルギー値が返ってきます。

H^∣n⟩=(n+21​)∣n

ここに先ほどの H^=a^†a^+21​ を代入してみると:

(a^†a^+21​)∣n⟩=(n+21​)∣n

両辺から 21​∣n⟩ を引くと、非常にシンプルな式が残ります。

a^a^∣n⟩=n∣n


結論

この式 n^∣n⟩=nn⟩ が意味するのは、「演算子 a^†a^ を状態 ∣n⟩ に作用させると、その状態の番号(励起数) n がそのまま倍数として出てくる」ということです。

  • n=0(基底状態)なら 0 を返す。
  • n=5(5つ励起した状態)なら 5 を返す。

まさに「今、エネルギーの粒がいくつあるか」を測定して教えてくれる演算子であるため、n^=a^†a^ は数演算子(Number Operator)と呼ばれます。

直感的には、「1つ消して (a^)、すぐさま1つ生やす (a^†)」という操作をすると、状態は元に戻りますが、その過程で「そこには n 個の通り道があった」という情報が係数として抽出される、というイメージです。

逆に、1つ増やして1つ消すという操作をするとどうなりますか?

「1つ消してから1つ生やす」のが n^=a^†a^ でしたが、その逆、つまり「1つ生やしてから1つ消す」という操作 a^a^† をするとどうなるか。

結論から言うと、結果は 「もとの数に 1 を足したもの」 になります。数式で詳しく見ていきましょう。


1. 交換関係からの導出

前回の回答で、消滅演算子 a^ と生成演算子 a^† の間には、次の重要なルール(交換関係)があることを導きました。

[a^,a^†]=a^a^†−a^†a^=1

この式を少し変形して、a^a^† について解いてみます。

a^a^†=a^†a^+1

ここで、a^†a^ は数演算子 n^ でしたので、

a^a^†=n^+1

となります。

2. 状態 ∣n⟩ に作用させると

ある状態 ∣n⟩(粒子が n 個ある状態)に、この操作を行ってみます。

a^a^†∣n⟩=(n^+1)∣n⟩=(n+1)∣n

つまり、「1つ増やして1つ消す」という操作をすると、もとの状態 ∣n⟩ に戻りますが、係数として (n+1) が飛び出してくることになります。

3. 直感的なイメージと「真空」での違い

なぜ a^†a^(消して生やす)は n なのに、a^a^†(生やして消す)は n+1 になるのでしょうか?

その違いが最も顕著に現れるのは、何も粒子がない 真空状態 ∣0⟩ のときです。

  • a^†a^∣0⟩ (消して生やす): まず「消そう」としますが、何もないので 0 になります。a^†(a^∣0⟩)=a^†(0)=0
  • a^a^†∣0⟩ (生やして消す): まず「1つ生やして」から、それを「消す」ので、また真空に戻ります。しかし、この「一度生み出した」というプロセスがあるため、値は 0 になりません。a^(a^†∣0⟩)=1∣0⟩

この「順番を入れ替えると 1 だけ差が出る」という性質こそが、量子力学における「交換関係」の本質です。

4. エネルギー(ハミルトニアン)との関係

実は、調和振動子のエネルギーを計算する際、この2つの順番の「平均」をとっていると考えることができます。

H^=21​(a^†a^+a^a^†)

これを計算すると:

H^=21​(n^+(n^+1))=n^+21​

ここで出てくる +21​ こそが、粒子が0個であっても存在するエネルギー、いわゆる 「零点エネルギー(真空エネルギー)」 の正体です。


まとめ: 「増やしてから消す」操作 (a^a^†) は、「今ある数 n に、これから増やすための枠 1 を加えたもの」 を数え上げる操作、と言うこともできます。

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