裸の質量(理論上の質量)は誰も見ることができない←じゃあ「-∞」を忍び込ませてしまえ!
「くりこみ」という難解な概念を、高校物理や数学の考え方を使って、できるだけ直感的に説明します。
1. 直感的なイメージ:水中のボールの重さ
まず、数式の前にイメージを掴みましょう。
- 真空中の重さ(裸の質量): ボールそのものの重さです。
- 水中の重さ(実効的な質量): 水中でボールを動かそうとすると、周りの水も一緒に動くため、空気中より重く(あるいは動かしにくく)感じます。
素粒子の世界でも同じことが起きます。素粒子が移動するとき、周りの空間(場)に「仮想的な粒子」がまとわりつき、そのせいで見かけの重さや性質が変わってしまいます。
2. 高校数学の式で例えると?
高校数学の「文字式の計算」をイメージしてください。
物理学の計算をすると、結果が次のような形になってしまうとします。
$$M_{\text{実測}} = m_0 + \infty$$
ここで、\(M_{\text{実測}}\) は実際に実験で測る重さ、\(m_0\) は理論上の「裸の質量」です。計算を進めると、どうしても右側に \(\infty\) (無限大)が出てきてしまいます 。
くりこみの「解決策」
「答えが無限大になるのは困る」ので、物理学者はこう考えました。
「そもそも、測ることもできない $m_0$(裸の質量)が、実は $-\infty$ の性質を持っていたとしたらどうだろう?」
つまり、数式を以下のように「調整(くりこみ)」するのです。
- 裸の質量 $m_0$ を、有限の値 $m$ と無限大を打ち消すための「相殺項(カウンターターム)」に分ける 4444。+2$$m_0 = m + (\text{無限大を打ち消すためのマイナス無限大})$$
- これを計算式に代入する。$$M_{\text{実測}} = [m – \infty] + \infty$$
- 無限大どうしが打ち消し合い、有限の $m$ だけが残る 5。$$M_{\text{実測}} = m$$
資料では、この「無限大を打ち消すための調整役」として、$\zeta_m$(くりこみ因子)という記号が使われています 6666。+1
3. なぜこんな「ズル」のようなことが許されるの?
一見、数学的なトリックに見えますが、これには重要な思想があります。
- 私たちは「裸の量」を一生見ることはできない: 私たちが実験で観測できるのは、常に「相互作用を終えた後の結果」だけです 777。+1
- 実験値を基準にする: 理論から出た無限大を消すように値を「インプット(実験値から逆算)」してしまえば、他の現象も正確に予測できるようになります 8。
事後報告になりますが、この「くりこみ」の手法を使うことで、量子電磁力学(QED)などは実験値と驚異的な精度で一致するようになりました 9。
まとめると
くりこみとは、「計算上出てしまう無限大を、直接見ることができない理論上の値(裸の量)に吸収させて、実験で測れる有限の値に整える作業」のことです。
この図のような「ループ(自分自身に戻る相互作用)」が、無限大を生む原因となります 10101010。+1
次は、この無限大をあえて「一度有限にしてから計算する」という、さらにテクニカルな「次元正則化」という手法について詳しく解説しましょうか?

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